不義理な就活

2008年か2009年のころ、僕は大学卒業後の働き口を探していた。いわゆる就活である。

当時はインターネットを見れば何でも分かるとばかりに「就活」と検索して活動を始めた。
あふれる情報にまみれながら、合同会社説明会とやらに参加を申し込んだ。

会場を適当にふらふらしているうちに、就活の仕方が少しは分かった。
何件も申し込んでいいんだね。結果を待たずに。
あちこち申し込みまくって、採用がかぶったら好きに蹴っていい。ふーん。

そんなことは当たり前なのかもしれない。
それに、たいへん都合がいい。ぜひそうしたい。
法的にも問題ないんだろう。
でも引っかかるんだよなこれが。

いい顔して、ぜひ一緒に働きたいんです!とか言いながら、返事も聞かないで同じ事を他の人に言う。それって不義理じゃないか。それか下品だ。
異性にラブレターをばらまくようなもんじゃないか。
いや、同性がいい人もいるよな。弱った。なんて言えばいいんだ。
それはどうでもいいけど、気に入る会社がなかったし、そんな情けないことはやってられないと、さっさと帰った。

ある日だらだらインターネットを見ていると、ある会社が求人広告を出していた。
最近のインターネットは本当にすごい。用のあることばかりが表示されて、効率的で、思いがけないことにはぜんぜん行き当たらなくて、ちっとも世界が広がらなくて、つまらん!

そういうわけで、ちょうど興味のある分野の会社で、話を聞くと納得で、申し込んだ。
返事が来るまでひと月あまりだったかな。就活はもうやめたと決め込んで、ぼーっと待っていた。落ちたら他を当たるか、と。非効率かもしれないが、魂を売るよりはいいと思った。
いま思えば運と時期が良かったんだと思うけど、4年生の12月ごろだったかな。なつかしい。採用の返事をもらった。

こういう話は、採用されたから言えるんだろうか。
浪人でもしてたら今ごろ、当時の自分を張り倒してでもエントリーシートとやらを量産させたいぐらいだったかもしれない。

ただ、「何十件も申し込みまくったあげく浪人した」という人と「浪人したけど義理は通した」という人じゃあ、後者のほうが信用されるんじゃないかと、僕には思われる。